健康病について
国民健康運動のパラドックス
健康への自己責任を強調する考え方は個人のナルシズムに訴えようとするやり方である。・・
健康作りへの責任を持たされた人々は社会的な健康水準が上昇するたびに自分の責任の水準を高めなければならない。
そして、たえず健康水準が高くなっていく状況のなかで人々はついに自分が果たすべき責任の水準がわからなくなってしまう。・・・。
健康作りに励めば励むほど人々の不安は大きくなっていくというパラドックスがここに生まれる。
生活習慣病
生活習慣病を防ぐための健康的な生活習慣として、白書では7つの習慣が挙げられている。
- 適正な睡眠時間
- 喫煙をしない
- 適正体重を維持する
- 過度の飲酒をしない
- 定期的にかなり激しい運動をする
- 朝食を毎日食べ
- 間食をしない
・・・現代日本人の中で先の枠の生活水準を守っている人は誰もいないと言っても過言ではないだろう。・・・
それが守られていないということは、ひそかに慢性疾患が進行していることになる。
つまり生活習慣病が設定された故に日本人のほとんどは生活習慣病に罹り、日本社会は病人があふれる社会になったと言えるのだ。
「異常のない健康」から「生きがいを持った健康へ」
健康とは「生きがい実現に支障のない状態」なのだと言える。・・・
人間の生きがいは個性的である。
何を生きがいにするかは個々人が決めることであり、個々人によって生きがいは異なっている。・・・
生きがいが個性的であるが故にその生きがいを実現するにあたってどのような心身の状態が望ましいか、何が生きがいに支障のない状態かもそれぞれの人間によって判断が違ってくる。・・・
このことは、健康が個々の病気や障害との関わりに規定される個別的な状態ではなく、人間の生き方との関わりにおいて規定される全体的、全人的状態であることを示している。
上杉正幸著「健康病ー健康社会はわれわれを不幸にするー」から